2019年09月29日

Advantest Multimeter R6551

AC電圧レンジのノイズフロア上昇とエラーコード“Err CA”

古い測定器を愛する人(本当はお金が有れば…)との情報共有のために古いアドバンテスト社製のデスクトップマルチメーターR6551の不具合に関して私の経験を書いておきます。

@ AC電圧計のノイズフロア
10年ほど前にR6551をネットオークションで安価に入手しましたが、数年使用後にAC電圧レンジのノイズフロアが上昇し(300mVレンジで入力ショート時に約170mV, もちろん高い電圧レンジでも入力が無い状態の表示が大きくなる)AC電圧の測定に支障が出てきました。その後数年間は棚に置きっぱなしになっていましたが、UX生さんのサイトに同じ症状の修理方法を発見。UX生さんに感謝・感謝です。
http://web1.kcn.jp/tube/DMM.R6551.html
さっそく私のマシンに応用させていただきました。私はこの機会に全部の電解コンデンサを交換してみました。取り外し後、容量を測定してみると普通の片側にリードが2本出ているタイプは全数定格の70〜90%の容量が有り、問題になりそうな劣化は見られませんでしたが、表面実装の電解コンデンサは全数容量が定格の1/20〜1/3程度まで低下しており全滅でした。ケース内のスペースは十分にあるので、新しいコンデンサは表面実装タイプは使用せず、通常のリード線タイプを使用しました。また、6.8μFの電解コンデンサは105℃品が手に入らなかったので、タンタルコンデンサを使用しました。
0_372mV.jpg

結果はAC300mVレンジの残留ノイズは0.4mV前後(ウォームアップ後、測定レートスロー時)に激減しました。UX生さんのサイトの報告より良い結果ですが、基板の部品レイアウトを見ると私のマシンは改良バージョンのようにも見えます。それかタンタルコンデンサの使用で高い周波数でのノイズが減ったのかもしれません。

A エラーコード "Err CA"
この機種は校正値が電池(リチュームイオン一次電池)でバックアップされたRAMに保存されています。私のR6551に使用されているICの日付コード(西暦の下2桁+週の番号2桁の計4桁)は1990年の後半がほとんどなので、1990年末か1991年初めの製造と思われます。バックアップ電池の電圧を測ると3.7Vあり、電圧はまだ十分ですが、さすがに29年前の電池は明日死んでも不思議ではありません(取り外し後に確認したら1990年11月製造でした)。校正値が消える事は覚悟で、電池もついでに新品と交換することにしましたが、同じリード付きは入手が難しく、有っても大変高価なので、秋月で売っている1/2AAサイズの塩化チオニルリチウム電池とピン付きの電池ボックスを使用しました(バックアップ用に電池ボックスの使用はちょっと?ですが…)。ピン付きの電池ボックスは元の電池の足の穴とちょうど合います。
ところが、電解コンデンサと電池を交換し終えて、電源スイッチを入れると "Err CA" と表示され、キー入力を全く受け付けません。
Err_CA.jpg

ネットからダウンロードした取説を見ると、校正の方法は書いてあるのですが、このエラーコードの場合は「最寄りの営業所、または代理店まで連絡してください」とあります。校正値が消えるのは想定内ですが、どうやってこのエラーを解除して、校正を実行できるのかわかりません。校正値は製造後30年近く経つており、校正ステッカーも貼ってないので、全く当てにならないので、当実験室で一番信用できそうなマルチメーターと比較で校正し直せばよいのですが…。しかし、エラーの解除方法がわからないと…。
もちろん、電池を交換しなくてもそう遠くない時期に同じエラーが出るでしょうけど。

1時間くらいググってやっと見つけました!!!
http://bbs.38hot.net/thread-94117-5-1.html

実機で確認した内容を含め、要点をちゃんとした日本語で書くと;
--------------------
2セットの校正値がTC5564 RAMの0x7413 – 0x755Cと0x7567 – 0x76B0に格納されている。最初のバイト0x7413と0x7567がチェックサムである。
スイッチオン時に両方のチェックサムが計算され、両方とも間違いであるとErr CAが表示され、キーの入力を受け付けなくなる。
一旦スイッチを切り、背面のCALスイッチがONの状態(押し込んだ状態)でV DCとSHIFTの両方を押しながらパワースイッチを入れる。27C256 ROMに収納された2セットの校正値の初期値がRAMにコピーされ、通常の校正モードに入る。
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また、この情報を提供した人によると、電池の交換時に表面実装の電解コンデンサを交換するのが「当たり前」のようです。
http://bbs.38hot.net/thread-94117-4-1.html

重要:ROMからロードされる初期の校正値は正確な値と比較して数%の誤差があるようですので、校正を実施しないとネットで買える1000円のテスターの方がよほど精度が高いです。必ず校正を行う必要があります。
本来は校正するマルチメーターより一桁以上精度の高い校正器が必要ですが、そこはアマチュアと言うことで…、私の場合は手持ちの測定器を総動員してそれなりの校正を行いました。本来の精度より1桁落ちくらいなら御の字?でも、30年前の校正値よりマシではないかと…。

posted by ひら at 16:50| Comment(2) | 測定器

当実験室のオリジナル測定器:交流電源装置

実験用の電源は直流であれば新品でも安いし、ヤフオクにも中古が多く出品されています。当実験室でも小型のものから、大きなものは16V-40A、1000V-60mAなど数台所有し、各種の実験にはほぼ困りません。しかし、交流電源となるとホビイスト向けの製品はほとんどなく、まれに中古がヤフオクに出品されても、すぐに高い価格で落札されてしまいます。予算が微小な当実験室では買えません。
スライダック(ボルトスライダー、0V〜130V可変)は所有していますが、元が家庭用の100Vですので、きれいな正弦波ではなく、電圧も数%はふらふらと変化し、周波数は変えられません。そこで、当実験室ではホームACパワーアナライザの開発を行うにあたり、代用品の導入を考えました。出力200Wのオーディオアンプにファンクションジェネレーターから正弦波を入力し、スピーカー端子に100V⇒24Vのトランスを逆に接続して0V〜120Vの交流出力を得ます。
AC電源.jpg

(左の写真をクリックして拡大)
オーディオアンプは業務用のPanasonicのRAMSA WP-1200B(200W+200W)を片チャンネル使用しています。実はBTL接続で400Wを狙ったのですが、なぜか直ぐにAチャンネルが故障。とりあえず200Wでも困らないのでBチャンネルだけ使用しています。この種類の業務用パワーアンプはヤフオクで結構安い価格で売られています。トランスはパチンコ台の電源として使用されていたものらしいトライダルコアの100V⇒24V、350VAです。このトランスはヤフオクで低価格で沢山売られています(別ページのリチュームイオン電池のタブ溶接用と同じもの)。
入力ソースはファンクションジェネレーターですので、周波数はもちろん、波形も必要があれば変えることも可能です。電圧を安定化する回路は有りませんので、無負荷で出力電圧を100Vに調整して、90W定格の電球(105V時に850mAくらい)を接続すると97Vくらいに低下します。使用目的にもよりますが、実用範囲内と思います。周波数は20Hz〜数kHzまで問題なく使用できます(当実験室の場合、あまり周波数を高くしたらトランスに取り付けている電圧計が燃え出しました)。
AC電源ON.jpg

この交流電源は最近行ったR6551マルチメーターの交流電圧・電流レンジ校正にも使用しました。






なお、試してはいませんが、ハイインピーダンス出力端子が有る屋内放送用のアンプの場合はトランスを内蔵していて、そのままでも100Vくらいの電圧出力が有るようです。出力は数百ワットあるのが普通です。でも最低でも100V+の電圧が欲しいので交流電源の代わりに使えるかどうか?です。

posted by ひら at 17:18| Comment(1) | 測定器

2020年01月05日

当実験室のオリジナル測定器:交流電圧・電流発生装置

以前、当実験室で使用している出力200Wの実験用交流電源装置を紹介しましたが、これをマルチメーターの校正用に使用するのはまるで牛刀で果物の皮を剥いているのと同じで、使いにくく、精度の問題もありました。
http://hirakawa-jp.sblo.jp/article/186624237.html

上から.jpg

そこで、当実験室で修理したマルチメーターR6551の交流レンジの校正を再度行うために、校正用に適切な出力を有する交流電圧・電流発生装置を開発しました。

写真をクリックで拡大



スペック的には
周波数40Hz〜3kHz
(マルチメーターの交流レンジ校正時の周波数はメーカーにより指定が違うが400Hz〜1kHzを使用)
電圧出力:ハイレンジ Max 960V、ローレンジ Max 120V(電流は定義せず、多分最大5mA程度か?)
電流出力:ハイレンジ Max 3A、ローレンジ Max 300mA(Max 時の電圧は6V)

電流測定中.jpg

装置自体には電圧計/電流計は取り付けず、校正対象のマルチメーターと信頼できる精度の高いマルチメーターを並列/直列に接続して使用するようにしました。よって、開発に留意すべき点は電圧/電流の短〜中期的な安定性とノイズの少なさです。







内部.jpg

開発方針としてはなるべく手持ちのパーツを使用し、シグナルジェネレーターとパワーアンプは通販で買える中国製の基板を利用し、開発期間を短くする事にしました。結果的に安価に仕上がっています。




使用しているトランスはBlock社のAVB1.5/2/6で、特殊かもしれませんが、RSコンポーネントから購入できます。
https://jp.rs-online.com/web/p/pcb-transformers/6675284/
同じトランスをホームACパワーアナライザでも使用しています。
http://hirakawa-jp.sblo.jp/category/4507012-1.html
詳細は回路図と写真を参考にしてください。

詳しい説明は省かせていただきますが、苦心した点を紹介します。
電流出力は同じ電流ならなるべく電圧を低くして、必要な電力を少なくしたいです。今回開発した装置はアマゾンに出店しているショップから購入した、デジタルパワーアンプTPA3118をPBTL接続した中国製のモノラルアンプ60W出力の基板です。ICのデータシートによると出力に接続できる負荷インピーダンスは最低で2Ωなので、2Ωの負荷抵抗に3A流すには6V必要です。つまり、18W。それだけの電力を負荷抵抗に消費させると、使用する抵抗のワット数にもよりますが、かなり温度が上がり、抵抗値の精度に影響を与えます。したがい、負荷抵抗はなるべく低くしたいものです。
最初の設計ではトランスの使用を考えてみました。二次側の電圧を1.5Vにして、負荷抵抗を0.5Ωにすれば3A流れ、必要な電力はたったの4.5Wで済みます。しかし、市販されているトランスには出力1.5Vなどありません。複数のトランスを組み合わせて必要な電圧を得るにも、二次側に3Aを流せるトランスはかなり大きなサイズになります。専用のトランスを製作すればよいのでしょうが、ワンオフで作るにはかなり高価になるでしょう。結局、トランスはあきらめて、アンプの出力を直接負荷抵抗に接続することにしました。
実は、2Ωの負荷に3Aの電流を流しても必要な電力は18Wなので、アンプの出力は30Wもあれば十分と考えTDA8932を使用したモノラル35W出力の基板を購入。ところが、試してみると連続出力の場合の出力は定格の1/3〜1/2程度しかありません。定格の35Wは音楽や音声を出力する場合のようです。また、ICのデータシートにはヒートシンクは不要と書いてありますが、実際は連続出力ではかなり熱くなり、放熱を考えておかないといけません。
amp.png

この失敗を元に、TPA3118の60W出力のアンプに取り換え、装置内部の写真でわかる通り、小さな放熱板(aitendoから購入した小さなヒートシンクを秋月で買った熱伝導性の接着剤で張り付けた)とファンを使用しています。なお、このアンプはそのままではゲインが有り過ぎるので、基板上のR27(100K)のチップ抵抗を取り除きゲインを20dBに下げています。
アンプには古いパソコン用の電源を流用して16Vを供給しています。
アンプの出力はディレイタイマを使用しスイッチを入れてから1秒ほど遅れて負荷に接続するようにしました。そうしないとポップノイズで接続したマルチメーターなどを壊してしまうかもしれません。
DDSOSC.png

DDSのシグナルジェネレーターは同じく中国製の超安価のものです。これはATMELのマイコンの8ビット パラレルポートにR-2Rラダー抵抗のD/Aを使用した簡易的なDDSですが、周波数はMax 3kHzなのでこれで良いでしょう。
ケースを分解して、LCD表示部と本体基板を分離しています(実は、これは大変な作業でした)。オリジナルの出力回路ではDDSシグナルジェネレーターをOFFにしたときに直流が出力されてしまします(最大電圧の1/2の電圧)。この時に大きなポップノイズが発生する事になるので、出力を添付の図のように改造しました。ついでに、ローパスフィルタを兼ねて、8ビット出力をスムーズにします。また、電源は5VのレギュレターIC(LM1117-5.0)を取り外して直結にして、オリジナルの定格供給電圧9Vを5Vに改造しています。シグナルジェネレーターの出力は900mVrmsに調整しました。これで出力の最大電圧・電流を少し超えるくらいです。
交流出力信号は内蔵のDDSオシレータの出力を使用するとノイズが多いのか、5桁のマルチメーターでは最小桁が安定しません。したがい、シグナルジェネレーターの内蔵/外部信号の切り替えを設け、外部のファンクションジェネレターを使用できるようにしました。4桁程度の安価なマルチメーターの校正には内蔵のシグナルジェネレーターでも問題ありません。
AC_Generator_Main_1_v2.png
AC_Generator_Main_2v2.png
DDS Generator.png




















重要
最後ですが、一番重要な事を書いておきます。これを守らないとマルチメーターを壊します。
この交流電圧・電流発生装置は使用時の過電圧/過電流に対する対策はほとんどありません。したがい、スイッチのON/OFF、内部/外部の切り替え時などにポップノイズで瞬間的な過電圧/過電流が発生する可能性が大きいので、操作時は必ず電圧/電流を最小に絞ってから切り替えてください。また、外部オシレータからの入力が高すぎると同じく過電圧/過電流になります(900mVrmsを入力すること)。これらの対策を完全に行おうとすると、そちらの方が技術的に難しく、時間と費用が何倍もかかります。あくまでも、個人で、たまにしか使用しない事を前提に製作したものなので、これを参考に自分でも製作しようと考えている方は肝に銘じておいてください。

あくまでも、自己責任でどうぞ!



posted by ひら at 19:15| Comment(5) | 測定器