2019年03月12日

自作スポット溶接機(リチウムイオン電池タブ溶接用)

パチンコ台用のトロイダルトランス使用


コントロール基板を50Hz地域以外で使用した場合の情報を追加しました(2019年11月10日)

1.イントロ
YouTubeやWebサイトではリチウムイオン電池やニッケル水素電池のタブ溶接用の自作スポット溶接機は容量の大きい電解コンデンサやスーパーキャパシタに溜めた電荷を一気に放電させる方式と、大きな電源トランスを使用した方式が紹介されています。
Microwave.jpg

大きな電源トランスを使用した方式は旧式の電子レンジに使用されているトランスの二次側を壊して取り外し、数回巻きの低電圧、大電流の二次側の巻き線を作成するのが多く紹介されています。例えばこれ
写真をクリックしてオリジナルサイトへ。



ところが、電子レンジの高圧電源はかなり以前からインバーター方式になっており、電子レンジ用のトランスの入手は難しくなっています。また、近年廃家電品は資源再生用に管理されており、簡単にもらってくるわけにはいきません。昔はラジオ、テレビなどは道に捨ててあるのを拾ってきて、部品を取り外して使ったもですが…。その他の一般に入手できるトランスでは重ね巻きされており、二次側の巻き線を取り外すのは難しいです。
Trans and electrods.jpg
Spot welder.png












そこで、当実験室ではヤフオクなどで安く売られている、パチンコ台に使用されていたトロイダルコアの24Vトランスに注目してみました。トロイダルコアなので中央に穴が有り、簡単に低電圧、大電流用の巻き線を追加する事ができます。
左上の写真の状態でも、一応溶接できますが、安定した強度で、きれいに溶接するには、電流と通電時間の調整が必要です。一番簡単なのはebayや日本のAmazonで売っている中国製のコントローラーボードを使用することです。こんなのが(右上の写真)約1500円(ebayの例)〜約2500円(日本のアマゾンの例)くらいで買えるので、自分で設計して、マイコンをプログラムし、部品を集めるより、はるかに安く簡単に作れそうです。
ところが、この手の製品は価格的に魅力がありますが、実際の使用方法については情報がかなり不足しています。販売のサイトにスペックは表示されていますが、詳しい使い方は説明されていません。
そこで、当実験室ではダメ元で購入し、最悪リバースエンジニアリングを行うことを覚悟で、実際に使用できるか試してみました。2週間くらいで品物が送られてきましたが、いつものように説明書等は全く同封されていません。
海外のWebサイトやYouTubeを調べてみると何となく使用方法がわかってきましたの、製作に踏み切りました。

2.トロイダルトランス
まず、ヤフオクからパチンコの電源に使用されている容量350VA、AC24V出力のトロイダルトランスを入手してみました。容量が少し足りないかなとも思いましたが、結果的に電池のタブを溶接する用途には十分でした。トロイダルコアの中心を通っているボルトとナットを取り外し、ケースの中心の穴を広げ、電線を数回巻いて電圧を測ると、1回あたり0.372Vです。
Rods.jpg

写真のような溶接電極を用意してみました。ホームセンターで買った銅棒です。ただ、純粋な銅はもっと柔らかいハズなので、これは合金で硬くしたのだと思います。多分、純粋な銅棒をホームセンターの商品として展示していたら、お客さんから触られてクニャクニャになってしまうのだと思います。純粋な銅より電気抵抗が高いかもしれませんが、とりあえずこれを使用します。持ちやすいように16Cmくらいに切断して、一方をヤスリでとがらせます。棒は熱収縮チューブを2重に被せ電気の絶縁を兼ね、熱くなっても手で持てるようにしています。


この溶接電極に断面積5.5sq mmのIV線3mをはんだ付けしました。
電線を接続した溶接電極を溶接対象のニッケルストリップにあてた状態で4端子抵抗測定(https://www.hioki.co.jp/jp/support/faq/detail/?dbid=1682)で電気抵抗を測ってみると、合計で20mΩ程度です。

巻き数を少しずつ増やして、溶接を試してみると、10回巻きで十分な溶接ができました(つまり無負荷で3.72Vです)。溶接のコツがわかってくるともっと低い電圧でも良いかもしれませんが、コントローラーで電流を減らすことができますので、これを最大値とします。また、入手したトロイダルトランスに径が4.8mmもあるIV線を10回以上巻くのはかなり難しそうです。
念のためですが、トロイダルトランスの巻き線の回数はコアの中心を通る回数です。したがい、外側には9本の巻き線が見えます。
一次側には125度、7Aの温度フューズが入っていました。二次巻き線の数を増やし、電圧を上げ、電流が増えてくると、これが飛んでしまいました。トランスの温度はほとんど上がっていないので、過電流で飛んだと思われます。幸いなことに、このトランスのオリジナルの24V の二次側には普通のフューズホルダに入った15Aフューズが入っていたので、トランスの中の配線を変えて一次巻き線用につなぎ変えました。フューズを10Aに変えて試すと一発で飛んでしまいました。15Aに戻してこれまで100回くらい使ってみましたが、フューズが飛ぶことはありません。本来ならこの用途にはスローブロータイプのフューズを使用するべきところです。

2.コントロールユニット
bento.jpg
コントローラーボードをこんなお弁当箱に入れてみました。
下にある黒い箱のようなものはフットスイッチです。
クリックで拡大できます。





●表示ボードの右上の2桁の7セグLEDが電流で、トランスに直接AC100Vを接続した場合と比較して30%〜99%に調整できます。
●左上の2桁の7セグLEDが溶接の通電時間で、20mSを一単位として、20mS x 0〜99まで設定できます。
●下の3桁表示は、通電中は供給電圧、通常はスポット溶接の回数が表示されます。
●ロータリーエンコーダのつまみを押し下げると、該当する項目の該当する桁が点滅するのでロータリーエンコーダのつまみを回して調整します。なぜか、時計回りで数値が少なくなる???
●設定したら、再度つまみを押し下げて、次の桁へ移動します。
●設定を終えて、どの表示も点滅していない時にトリガスイッチ(フットスイッチ)をONにして、放したタイミングでトランスに通電します。
●スポット溶接の回数はつまみを2秒程度押すとリセットされます。
●供給電圧の表示はデフォルトで220Vになっています。校正はロータリーエンコーダのつまみを押し下げながら電源を入れ、ロータリーエンコーダで実際の電圧と合わせます。

このトランスとの組み合わせで、18650サイズのリチウムイオン電池に0.1mm厚のニッケルストリップを溶接する場合は、電流80〜90%、時間は20mS x 15〜20が適当のようです。コツは、溶接電極の一方を電池の電極に強く押し付け、もう一方はストリップの溶接したいところを軽く(動かない程度に軽く)押さえる事です。軽く押さえるとその部分の抵抗値が高いので、流れる電流が同じならジュール熱は抵抗値が高いところで多く発生します。
良くない例として、両方の電極をストリップの上に置くと、電極間に多くの電流が流れてしまい、母材との溶接が十分にできません。慣れてくると、以前はうまくいかなかったハズの電流や時間でも上手く溶接できるようになります。つまり、コツの習得が必要です。

スポット溶接の様子を動画にとってYouTubeにアップしました。
https://www.youtube.com/watch?v=Kta-hoXUjU0&t=9s

3.製作の注意
Circuit.jpg

電源と二つのトランス、コントローラーボード、トリガスイッチ(フットスイッチ)は左の図のように接続します。








コントローラーボードに電源を供給するAC9V〜12Vには、ハードオフで買った古いトランス式の電源アダプターから取り出したトランスを使用しました。アダプターの公称出力はDC9V-200mAですが、トランスの無負荷電圧はちょうど10Vでした。なお、ここに供給するのは必ず交流である必要があります。理由は、コントロールユニットの電源供給だけでなく、トロイダルトランスに供給する電流と時間の制御をこの交流入力に同期させるためです。
コントローラーボードの100AトライアックはON/OFF動作で、短時間ですので、ほとんど温度は上がりません。ヒートシンクは不要か、小さなものでOKです。

4. コントロールのしくみ
ここで、このコントローラーボードがどうやって通電時間と溶接電流を調節しているか解析してみました。
20mS x 10.bmp
99%.bmp










通電時間は20mS、つまり50Hzの1サイクルを一単位として、左の写真は10サイクル=200mSの期間通電しています。通電の開始はサイクルの始まりと同期していますが、開始はプラス側の場合とマイナス側のどちらの場合もあります。ただし、電圧がゼロをクロスする時点より常に約600uS早いです(トランス通過時の位相ズレの補正が合ってない?)。
右の写真は電流が99%の時で、供給されている交流50Hzの波形とほぼ同じです。
50%.bmp
30%.bmp










左側は電流が50%の時です。各サイクルのプラス側とマイナス側の後半の2/3程度のみ通電しています。右側は30%で後半の約半分(1/4サイクル)のみ通電しています。通電時間が少ないと平均電圧が下がり、電流が少なくなります。これは、白熱電球用のサイリスタ調光器と同じ原理です(使用してあるトライアックは双方性のサイリスタです)。
http://www.tamatech.co.jp/tamada/benkyo01.php

これらの制御のためにコントローラーボードは供給される交流の位相を知り、1サイクルが20mS (50Hz)なのか16.67mS (60Hz) なのかを考慮する必要があります。つまり、このユニットは通電時間を20msで一単位にしているので、50Hz専用なのかもしれません。しかし、別の考え方をすれば、最小値が30%なのは、このコントロールボードを60Hzで使用しても、次のサイクルに影響しないようにしているのかもしれません。溶接機は精密な制御が必要な訳でもないので、これでも性能は十分なのかもしれません。
ただし、他の類似製品には50Hzと60Hzのどちらでも使える(自動判別)を明記してある製品もあるので、60Hz地域の人はそちらを購入した方が無難かもです。

ちなみに、このオシロスコープでの波形観測には、溶接機とオシロにはそれぞれ絶縁トランスを通して100Vを供給しています。でないと、オシロのプローブを直接AC100Vに接続すると漏電ブレーカーが飛びます。実は、この絶縁トランスもパチンコ用のトランスを二個使用して自作したものです。


アップデート(2019年11月10日)
下のコメント欄に有るようにこのブログを読まれた方からこのコントロール基板は60Hz地域では働かないとのコメントが有りました。この基板は50Hz用であることは分かっていましたが、60Hzで使用するとどうなるかあまり深く考えずに一応使えるのではないかと書いてしまい、コメント主さんを人柱にしてしまいました。そこで、なぜ使えないか調べてみました。
このコントロール基板の制御の詳細を調べようと思い、実験をしてみました。このブログの他のページで紹介しているオーディオアンプとファンクションジェネレターを使用した実験用交流電源を使用し、40Hz〜120Hzで出力波形がどうなるか調べてみましたが、明確な制御ロジックを見つけることはできませんでした。トライアックのトリガ信号と交流出力の関連を見たかったのですが、入力チャンネル間のグランドがアイソレートされた特殊なオシロスコープが必要になり、貧乏な当実験室では買えません。したがい、出力波形のみの観測です。

結局、理由はよくわかりませんでしたが、下の波形の通り、50Hz以外では正常な作動はできない事だけは確認できました。60Hzでは3サイクルの内2サイクルに山が欠けてしまっているので、コメント主さんの報告通り電圧計で測ると低い電圧になってしまいます。また、異音がするのは周波数が1/3(非常に変則的ですが)になってしまっているのが原因かもしれません。
60Hz 99pc 2019-11-10 15_08_59.png
60Hz 70pc 2019-11-10 15_08_59.png







60Hz時の出力波形。左が電流99%(最大)、右が70%です。(クリックで拡大)

40Hz 40pc 2019-11-10 15_08_59.png
40Hz 99pc 2019-11-10 15_08_59.png


40Hz、電流が40%です。一見電流の%割合が違うだけで使えそうですが、右の電流99%では全くダメです。

70Hz 99pc 2019-11-10 15_08_59.png


70Hz、電流99%だとこんな感じです。






アマゾン等で売っている基板の説明で通電時間の単位が0.02秒(20m秒)のものは50Hz専用だと思います。60Hz地域の人はスペックに50Hz・60Hzのどちらでも使用できると明記されているものを購入してください。これらのコントロール基板は電源を入れると数秒で入力された交流の周波数を測定して表示し、以降それに応じた制御を行うようです。



posted by ひら at 15:22| Comment(47) | スポット溶接機

2019年03月24日

いつの間にか気泡が抜けていた!

フォローアップです。
2017年の5月に偏向板のフィルムを張り替え、その時点で直径8mmくらいの気泡が2か所残っていたわけです。その後、1年ほどは海外にいたので使用しておらず、帰国後2018年11月頃にやっと気づきましたが、いつの間にか気泡がきれいになくなっていました。ただし、あまり気にしていなかったゴミを噛んでできた小さな気泡は、当然ながらそのままです。
スマホの画面保護用フィルムは空気を通す性質があるので、ごみを噛んでいない限り、一晩から数日で気泡が抜けますが、そのような配慮が無い偏向板フィルムは永遠に抜けないと思っていたのですが、うれしい誤算です。
食品(例えば醤油)でもビン詰とプラスチックボトルでは賞味期限に違いがあるように、プラスチック類はわずかに空気を通す性質があるのは知っていましたが、これを自分の目で確かめる機会があるとは思ってもいませんでした。

2019年03月25日

接着剤が付いていないタイプの偏光板シートを使ってみました。

以前に「接着剤が付いていないタイプの偏光板フィルムを使用した方が良いかもしれません」と書きましたが、それを実際にやってみました。

どちらが良いか、結論を先に書くと完全に「あなた次第です」。

接着剤付きタイプ
利点
●最高に良い感じ(成功すれば…)

欠点
●最初の位置決めが難しい(接着剤が必要以上に強い、素材が厚く、硬い、などが原因)
●ゴミを噛み込むリスクが高い(同じ理由で作業に時間がかかるため)
●ゴミを噛み込んでしまうと、接着の弱いスマホの画面保護フィルムと違い、取り除くのはほぼ不可能(と思う)。私の技能ではここでジタバタすると、さらにゴミが入り込んでしまう。
●(私の技能では)気泡ができるのは避らけれないが、空気が抜けるのが非常に遅い(1年かかる?)
●失敗すると剥がしての再使用は不可能
●値段が少し高い
●偏光の方向を決めるときに暗明が明確でない(接着剤+保護シートが偏光を乱すみたいです。接着剤を自分の方に向けると暗明がはっきり出るのですが、接着剤を液晶画面の方に向けると暗明がはっきり出ません。でも保護シートを剥がすとはっきり出ます。偏光板の角を少し切り取って保護シートを剥がして偏光の方向を決めると良いようです。)

接着剤無しのタイプ
利点
●位置決めが簡単
●何度でも剥がし、再挑戦できる(でも、その必要は無し)
●値段が少し安い
●偏光の方向決めが容易(暗明がはっきり出る)
●ゴミや気泡に鈍感(ベースのガラス面と偏光板シートの間に部分的にわずかな隙間ができるのが理由。一方でこれが画面のムラの原因。)

欠点
●偏光板フィルムとベースのガラス板が密着するところと、密着しないところができ、画面にムラができる。
写真でオレンジ色の線で囲んだ部分の色ムラがわかると思います(写真をクリックすると拡大できます)。明るい部分が密着している部分です。実際の画面を目で見ると写真よりもう少し悪いかもしれない。
接着剤無し画面.jpg








結論
あなた次第
●接着剤付き:なんでも完璧でないと気が済まない人、作業に自信がある人(スマホ保護フィルム貼りの達人なら大丈夫)向き
●接着剤なし:リスクを冒したくない人、実用的に問題ないならそれで良しとする人向き

実は、当実験室で使用しているアドバンテスト製の測定器(ネットワークアナライザ)の画面がやはりビネガーシンドロームに冒されており、近いうちに修理しようと考えていますが、古いけど高価な機械で、作業中に壊した場合に代わりの部品の入手はほぼ不可能なので、少しでもリスクを減らすため、選択肢は「接着剤なし」です。
Advan.JPG








張り替えるときのちょっとしたアドバイス
接着剤付きの偏光板シートを張っているときに気泡ができそうになった場合、少し引っ張って戻すと、貼り終わった時にその部分が白く濁っていることがあります。接着剤に空気が混じり込むのかもしれません。しかし、数日で何事もなかったようにその部分は透明になります。